本について
- 7月16日
- 読了時間: 5分

私が幼稚園の時、母は私を週に一度、大倉山にある神戸市立中央図書館に連れていきました。理由は「本好きの子」になってもらうためだったと言っていました。
ところがどうも私は、親から勧められたことには興味を持ってあげる事が出来ない子供だったみたいで、あまり本を読まない人間に育ちました。読み始めはするのですが頭に入らない。5分くらいで猛烈な眠気が襲ってくるのです。図書館から本を借りてきても読まずに期限が来たり・・・。学生の時に「読めたらいいな本リスト」を、ものすごくきれいにまとめて作ったことがあるのですが、それを見た本好きの友達が勘違いし「すごい!こんなにたくさんの本読んでるなんて、さすがだね!私も負けずに読むよ。」とえらく褒めるので「いや、これらはまだ読んでいない。」と言い出せず、偽本好きとして話を合わせた過去があります。いつかチャンスがあれば懺悔したいけれど、相手はもう忘れているかもしれないな・・・。
とにかくそんな訳で、本はあんまり好きではありませんでした。どちらかというと漫画の方が好きです。読むと言っても一般的なメジャー漫画というよりは(例えばワンピースとか鬼滅の刃とかは読んでいないのです。)ちょっとダークな漫画というか・・・最近読んだのは「血の轍」という作品でした。メジャーな漫画となると突き抜けたメジャーになってしまって「ベルサイユのばら」とか「ブラックジャック」とかは、ずっと手元に持っています。「アドルフに告ぐ」も一度読んでみたいと思いながら今日まで来ているのですが・・・。
漫画って本より格が下がるような気がするのですが、漫画もすごい作品がたくさんあるように思います。要は自分の心が何かを感じたなら、何であろうと良いのではないかと思います。眠気と戦って読んだ振りをしている名著より「うーん・・・。」と唸り考え込む漫画の方がいい場合もあるでしょう。何が上で何が下とか、何が良くて何が悪いとかでなく、素直に感じたものを見つめるのが大事なのでしょうね。
ただ最近、40歳を超したころから「本」というものを何となく意識するようになりました。
私の生活はどちらかというと人と接する機会が少ないです。もちろん生徒さんと接することはありますが、それでも一人でいる時間が多い。これは自分が望んでいるスタイルですので構わないのですが、ともすれば自分の中だけで世界が出来上がってしまう危うさがあります。それはそれで独創性とか個性とかで評価される場面もありますが、一歩間違えれば孤立します。かと言ってどんどん人と関わっていこうとする性格ではない。そこでふと頭に浮かんだのが「本」です。
「この問題について誰かの意見を聞きたい。」「この分野でもっと詳しく知っている人と会いたい。」そう思っても、どれだけ実現可能だろう?もちろん誰かと討論してもいい。意見を聞きに行くためにアポイントを取ってもいい。でも私にはハードルが高い。でも本なら、その人の意見や気持ち、世界を自分のペースで知ることが出来る。つまり本を読むことは、私にとって誰かと会うことと等しいのではないか。本なら、その作者が思っていることを作品としてまとめてくれているし、自分に合わないとか、まだ早いとか思えば本を閉じればいい。実際に人と会うのとは違って、何度でも作品の中にその人に会いに行っても邪魔にならない。自分に必要な時に本を開けばいい訳だから。意見を聞きたい時に、チャットGTPも時々使うのですが、やはり本は血が通っているというか・・・やりとりするのではなく、静かにその人の産み出した作品を眺めている感じです。相手の話をじっと聞いている。そして自分の世界と繋がっていく。そういう静かなやり取りが、確かに心に染みこんでくる。
私は文字を読むという事が得意ではないので、オーディブルを活用しています。オーディブルなら作業をしながら聴けるし、私には合っているようです。最近は「モモ」という児童書を聴きました。私は振れ幅の大きな人間で、音楽でもパンクの次にクラシックを聴いたり、オーディブルでも芥川龍之介の「或阿呆の一生」のラスト「彼は唯薄暗い中にその日暮らしの生活をしていた。言はば刃のこぼれてしまった、細い剣を杖にしながら。」・・・・・を聴いた次に「にっくき脂肪。脱メタボ!あなたが悪いのではない。脳の仕組みのせい!」とダイエット本を聴ける寛容性を持っていて(これを寛容性と呼ぶのか?)とにかく何でも聴いています。
「本好きの子にするため。」
母ちゃん、そんな動機じゃ本は好きになれないよ。
そうだな・・・。本は自分とたった30~40センチの間に宇宙でも、深海でも、太古の昔でも遠い未来でも、現実も空想もなんでも描き出して連れていってくれることができる。その人が見た情景を自分も見ることが出来る。いろんな人のいろんな世界や意見を、静かに自分の場所から知ることが出来る。遠慮なく自分の意見を抱いていい。この人の主張は受け入れられないって思ってもいいし、この人の考え大好きだって思ってもいい。遠ざけても、ずっと側に置いてもいい。語弊があるかもしれないけど、人間よりも気兼ねなく付き合えて、でも深く知ることができる感じかな。
もし一人きりでいたくて、でも誰かと出会いたいなら、本を思い浮かべてもいいかもしれないね。




